SDGs取組事例

釣り禁止の港を再び開くアプリ「UMIGO」がつくる持続可能な釣り場

釣り禁止の港を再び開くアプリ「UMIGO」がつくる持続可能な釣り場

株式会社ウミゴー

静岡県西伊豆町を拠点とする「株式会社ウミゴー」は、アプリを通して釣り場と駐車場を予約・利用できるサービス「海釣りGO」を展開しています。漁業者や地域住民に偏っていた管理負担を減らし、一度釣り禁止になった港を、管理された釣り場として再び開放する仕組みです。

地域との関わりから始まった事業

代表取締役の國村大喜さんは、ソフトウェア開発・デザイン開発のエキスパート。釣り人であり海に対する課題感を持ち、10年間のキャリアを積んだ富士通時代には水産養殖に関わる事業の立ち上げも行ったとのこと。海関係での新規事業立ち上げ実績が評価され、西伊豆町からまちづくりへの協力を求められたことがきっかけとなり、横浜から西伊豆に移住を決めたとのことです。

「自由」の裏側で地域が負担

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、密になりにくいレジャーとして海釣りの人気が高まりました。一方、駐車やごみ、漁業者の作業を妨げる行為などを巡るトラブルも増え、日本各地の港で釣り禁止の動きが広がりました。釣り場が減ることで、受け入れを続ける港にさらに釣り人が集中し、地域の負担が増える悪循環も起きていました。

西伊豆町の田子漁港でも、漁業者と釣り人のトラブルを背景に、2022年7月から釣りが禁止されました。國村さんは、「一部の釣り人のマナー違反によって発生したごみの後始末は地元の人が負担していました。釣りを楽しむ人と、釣り場を維持する人との間で、負担が不平等な状態でした」と振り返ります。

このままでは、身近な海釣りを次世代に残せない。そんな危機感から、地元住民、漁協、町、民間企業が協力し、「海釣りGO」が生まれました。

アプリ「UMIGO」

DXで釣り場管理の負担を軽減

「海釣りGO」は、2023年7月に田子漁港で運用を始めました。釣り場と駐車場を1時間単位で予約でき、利用人数や時間も事前に把握できます。特徴は、DXによって釣り場管理の負担を軽減しながら、人とソフトウェアの役割を分けている点です。予約や決済、利用者管理はアプリが担い、現地での案内や巡視、美化活動など、人でなければできない業務は現場のスタッフが担当します。

國村さんは、「釣り場に人を置いて管理しようとすると固定費がかかり、事業として成り立ちません。受け付けや決済をアプリに任せることで、運営負担を抑えられます」と説明します。巡視員の配置は港の美化や安全な利用、地域雇用につながり、利用料による収益は漁港の設備整備や資源保護などにも活用できます。

アプリ「UMIGO」

釣り人を地域の「お客さま」に

漁港の有料釣り場化だけで大きな収益を上げられるわけではありません。それでも、地域が負担するだけだった釣り場管理に、収益を生み出せるようになったことには意味があります。「これまでは、釣り場の維持に釣り人が直接貢献できる仕組みがありませんでした。大きな金額ではなくても、地域に収益が入る仕組みをつくることができます」と國村さん。

田子漁港で受け入れを再開する際には、地元から「一度立ち入りを禁止した釣り人を、なぜ再び戻すのか」という声も上がりました。そこで説明したのが、以前の無秩序な状態に戻すのではなく、「ルールと管理体制、利用料を設け、地域に収益が還元される仕組みにすることで、理解を得ながら再開しました。

「一度釣り禁止になった場所を再び開放することは、これまで基本的に難しいと考えられていました。収益化できるビジネスモデルができたことで、検討の余地が生まれました」と國村さんは話します。取材時点では、季節限定を含め伊豆地域の5カ所で釣り場を開放しています。導入を検討している場所を含めると10カ所弱となり、日本海側からも相談が寄せられています。

釣り人を地域の「お客さま」に

地域ごとの事情に丁寧に向き合う

漁港には、漁業権や地域内の役割分担、長年の人間関係など、それぞれ異なる事情があります。そのため、一般的なサービスのように営業だけで導入を広げることは難しいといいます。「無理に営業するのではなく、地域の事情を聞き、丁寧に説明しながら付き合っていくことを大切にしています」と國村さん。

アプリを導入するだけでは釣り場を再開できません。漁業者、行政、地域住民の立場や歴史を理解し、地域内で合意をつくる過程も、「海釣りGO」の大切な役割です。

減っていく釣り場を、持続可能な釣り場へ

利用者がルールを守り、利用料を負担し、漁協が収益を管理や環境整備に生かす。「海釣りGO」は、この循環をつくることで、海釣りを将来へ残せるレジャーに変えようとしています。

同社は今後、「海釣りGO」で培った仕組みを釣り以外の「海業(うみぎょう)」にも広げ、漁業体験を提供する「漁業体験GO」の展開も構想しています。デジタル技術を、地域の人が無理なく海を守り、活用し続けるために使う。「海釣りGO」は、地域の理解を得ながら釣り利用を再開し、海と地域、人との新しい関係づくりに取り組んでいます。

SDGs達成を通じた取組み

目標8

働きがいも経済成長も

目標11

住み続けられるまちづくりを

目標14

海の豊かさを守ろう

目標17

パートナーシップで目標を達成しよう

企業情報
企業名
株式会社ウミゴー
代表者
代表取締役 國村大喜
本社地
静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須389-1 サンハイム西伊豆1F
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