SDGs INTERVIEW

パートナーシップの力で達成するSDGsの推進方法|浜松市市民協働センターの役割と取り組み
INTERVIEW #03

パートナーシップの力で達成するSDGsの推進方法|浜松市市民協働センターの役割と取り組み

浜松市市民協働センター
鈴木恵子さん

SDGsの17番目、最後の目標に掲げられているのは、「パートナーシップで目標を達成しよう」です。しかしながら、誰と・どう協力すればいいのかは悩みどころかもしれません。

そう悩んだときは、「市民協働センター」を訪れてみてはいかがでしょうか?きっと、支援をしたい人と支援を必要としている人の架け橋になってくれるはずです。

そこで今回は、浜松市市民協働センターの運営主体である認定NPO法人魅惑的倶楽部(エキゾチッククラブ)の理事長、鈴木恵子さん(以下、鈴木さん)に市民協働センターの役割とSDGs17番を達成するポイントを聞きました。

プロフィール

鈴木 恵子

静岡県磐田市出身。浜松市の公立中学校で教諭として10年間にわたり音楽科などの授業を担当する。出産を機に退職、民生委員やママさんコーラスなどの活動を経て、NPO法人魅惑的倶楽部を設立。2011年より浜松市市民協働センター指定管理事業者。2015年に認定NPO法人認証を取得。NPO法人の立ち上げや企業CSR活動へのアドバイザリー支援を行う。

支援を必要とする人たちの存在を知ることが、私たちにできる社会貢献の第一歩
「市民協働センター」は、どのような役割・目的を持った施設でしょうか?
市民協働センターは、市民活動組織やNPO団体と、市民や一般企業のみなさんとの懸け橋となる施設です。多様な人々が協力してまちづくりを行えるよう、さまざまな支援を行っています。

たとえば、市民活動・NPOに関する相談を受け付けたり、情報を収集しデータベースを作るなど。それらの情報は、ボランティアや社会貢献に意欲のある地域企業や、市民のみなさんに向けて発信しています。
鈴木さんが市民活動に携わったきっかけは何でしょうか?
娘が生まれたのを機に教職を辞めて、いろんな地域活動に参加するようになったことですね。その中で、知的障がいのあるお子さんをお持ちのお父さんと知り合いました。その方は、「子どもが声をあげたり踊りだしたりするので、気軽に連れて行けるコンサートがない」と仰るんです。

私は音楽の教員だったこともあり、知的障がいのある子どもさんも全力で楽しめるコンサートを開きましょう、と意気投合。1999年にエキゾチッククラブという任意団体を立ち上げ、取り組みをはじめました。

障がいのある人とともに楽しむコンサート「マジックハートコンサート」の様子
参考:魅惑的倶楽部Facebookページ
エキゾチック(=異国的、魅惑的)という奇抜な団体名にしたのは、障がい者の方だけでなく、多様な人たちに混ざってもらいたかったから。その後はNPOの法人格も取り、さまざまな文化芸術活動を企画・運営しながら今に至ります。
コンサートをはじめ、さまざまな文化・芸術活動を行っているのには、どのような背景がありますか?
まずは多様な人が集まって、お互いを知り合ってもらうことが大切だという考えがあります。残念ながら私たちは暮らしの中で、いろんな偏見や差別を持ってしまいますね。障がいとともに生きる人たちに向けられるものだけでなく、LGBTQのように人知れず葛藤を抱える方に対するものも。

そんな社会でも一生懸命生きている人たちがいることを、まずは知ってもらえる場を作りたいと思ってきました。知ってもらうことから共感が生まれ、「何か力になりたい」という気持ちに繋がっていきますから。

参考:障がいのある人とともに祝う成人式「魅惑的生人四季(みわくてきせいじんしき)」第18回の様子
「パートナーシップミーティング」への参加がSDGs推進を加速する

市民協働センターを訪れると、さまざまな情報・冊子が手に入る。広報誌「ENGAWA」の発刊も。
多様な人たちが集まると、パートナーシップも生まれやすくなるかもしれません。ちなみに「市民協働」というと、具体的にはどんな活動をいうのでしょうか?
具体的な活動形態があるのではなく、「想いのある所に人々が集まって、各々にできることをする」という在り方だと考えています。

だれか1人の想いに共感して人が集まって、それぞれができる行動を起こします。そうして起きた行動と行動は、歯車のように噛みあって大きな動きを作っていくのです。

2011年の東日本大震災が起きたときも、ある中学生の「文房具を集めて被災地に贈りたい」という想いが大人たちも巻き込み、大きな歯車を動かしました。当センターの2階にあるスペースを使って、文房具の回収を呼びかけたのです。するとまもなく、2トントラックがいっぱいになるほどの文房具が集まってしまいました。家に余っている文房具がない人も、お金を寄付してくれたり集まった文房具を分別してくれたり。みなさん、自分にできることをしてくれたのです。

「あぁ、協働って、こういうことだな」と心から思いました。歯車と歯車がかみあって動きが大きくなると、地域の企業や行政を巻き込む場合もあります。パートナーシップの“歯車”がうまく回れば、大きな目標も達成できるでしょう。
すばらしい在り方です。しかしながら、誰と・どのようにパートナーシップを結べばいいのかは、見極めが難しいかもしれません。
そうですね。ですからやはり、支援を必要とする人と支援したい人が、お互いに知りあうことがスタートになりますね。そうした背景で2010年からパートナーシップミーティングという、市民活動団体やNPO、企業のCSR部門、行政などが交流できるイベントも開いてきました。

2020年パートナーシップミーティングの様子
パートナーシップミーティングでは、参加団体みなさんの活動も紹介しています。「こんな信念をもっているのか」「詳しく話を聞いてみたい」と思う団体が見つかり、市民協働の一歩としていただけたら嬉しいです。
パートナーシップミーティングを開いてから、市民協働にも変化が現れていますか?
地域企業との連携が加速した感覚があります。たとえば、1963年から活動を続けている「全国心臓病の子ども守る会(静岡市葵区)」の課題に、浜松いわた信用金庫さんが応えてくれたことがありました。

心臓病の方は、援助や配慮の必要性を伝える「ヘルプマーク」を付けていることが多くあります。しかし、そのマークの認知度がなかなか上がりません。パートナーシップミーティングの発表でそのことを知った浜松いわた信用金庫のご担当者さんが全支店にかけ合い、ヘルプマークの啓もうポスターを掲示してくださったのです。

そうしたご協力のお陰で地域企業との接点が増えました。本当にありがたいパートナーシップをいただいています。

参考:ヘルプマークの周知活動 合言葉はSDGs【全国心臓病の子どもを守る会 静岡県支部】
「SDGs、何から始めれば?」そんな悩みにもパートナーシップの力で応えていきたい
SDGsの推進といっても、そこまで大きな支援ができないと委縮してしまう企業・個人の方もありそうです。
たしかに、SDGsの取り組みをアピールするカラーホイールバッジを胸に付けていても、「自分たちはSDGsと呼べるような活動ができているのだろうか?」と不安に思われている方が多いと感じます。

ただ実際にお話を聞いてみると、すでに立派に活動している企業さまも多いんですよ。会社の周りを掃除するとか、社員を大切にするとか。それらも立派なSDGsです。

さまざまなご事情がありますから、みなさんにできることから始めるのも大事だと思います。だからこそ私たちも、最初はいろいろなお話をして、その方が本当に達成したいのは何かをお聞きするようにしています。

私たちの役割は、人と人、想いと想いを繋げること。みなさんが社会のためになりたいと思い立ったとき、この浜松市市民協働センターが、親身になって仲介支援のできる場所であれたらと思います。
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