SDGs INTERVIEW

スポーツの力で、地域を元気に 地域と未来をつなぐ“循環の仕組み”を全国へ|静岡ブルーレヴズ株式会社の取組み
INTERVIEW #19

スポーツの力で、地域を元気に 地域と未来をつなぐ“循環の仕組み”を全国へ|静岡ブルーレヴズ株式会社の取組み

静岡ブルーレヴズ株式会社 経営企画室長
竹中大也さん

静岡ブルーレヴズが、スポーツ庁のスポーツ産業の成長促進事業「スポーツコンプレックス推進事業」に採択されました。国内で採択されたのは2団体のみで、プロスポーツチームとしては唯一の選出です。
今回のインタビューでは、クラブのSDGsやまちづくりへの取り組みを牽引してきた経営企画室長・竹中大也さんに、採択の背景や地域とスポーツの未来について伺いました。

プロフィール

竹中 大也

TAKENAKA HIROYA
静岡ブルーレヴズ 経営企画室室長。青森県出身。大学卒業後、2005年に政府系金融機関へ入行し、ベンチャー企業の経営支援や融資に携わる。自身のサッカー経験を通じて「スポーツが地域を元気にする可能性」を感じ、働きながら早稲田大学大学院でスポーツビジネスを学ぶ。

卒業後はスポーツビジネスのコンサルティング会社にキャリアの舞台を移し、クラブが「ジュビロ」から「静岡ブルーレヴズ」へリブランディングする節目にも携わった。2021年にクラブへ加わり、2023年に経営企画室を立ち上げる。現在は、事業戦略や計画の立案・策定やSDGsの視点を取り入れた社会課題の解決に貢献するためのプロジェクト「Scrum Action」などを推進している。

スポーツコンプレックス推進事業に採択された背景を教えてください
2022年11月から掲げてきた「SCRUM Action」を軸に、エコロジー・フード・ダイバーシティの3つのテーマで地域と未来のための活動に取り組んできました。その一環として進めてきた「渋滞緩和」「公共交通の利用促進」「脱炭素」など、試合観戦と社会課題解決を結びつける取り組みが評価され、今回の採択につながったと受け止めています。

昨季はナビタイムジャパンさんと連携し、来場者の移動手段に応じてポイントが付与される仕組みを構築しました。徒歩や自転車の利用を促進し、ポイントで抽選会などに参加できる仕組みとすることで、楽しみながら環境配慮につながる形をつくりました。遠い駐車場の利用者にポイントを多く付与する工夫など、渋滞緩和に寄与するビジネスデザインにもしました。
結果として、ファンの皆さんからは「渋滞が解消されスムーズで快適だった」という声が寄せられ、クラブとしても手応えを感じました。公共交通や環境配慮への意識が高まったというアンケート結果もあり、地域の方や行政からも評価をいただきました。

「プロスポーツチームとして唯一の採択」という点については、どのように感じていますか
正直、身の引き締まる思いです。ただ、静岡ブルーレヴズは「革新と情熱で、心踊る最高の感動をつくり出す」というミッションを掲げています。今回の採択は、スポーツの感動を届けながら、地域の未来に新しい価値を生み出すチャレンジだと捉えています。

私たちはクラブの独立分社化を進めたことで、地域に根ざした「自立・自走するクラブ」として歩み始めました。今回の事業を成功させることで、地方都市におけるスポーツの可能性を示し、日本全国のスポーツクラブや自治体などのモデルケースになれればと思っています。
渋滞緩和や公共交通促進の取り組みについて、現場で感じている効果を教えてください
アプリを活用することで退場時間の分散が見られ、渋滞の軽減につながったことを実感しました。以前よりスムーズに帰路につけたという声も多く、試合体験の満足度向上にもつながりました。

また、こうした取り組みは行政・地域企業からも注目いただいており、「一緒に創り上げる街のモデルになるのでは」という声も届いています。スポーツを中心に地域課題を解決していく可能性を、クラブとしても大きく感じています。

SDGsをどのように捉え、どのようなことを意識しながら推進していますか
SDGsは「やらなければいけないこと」というよりも、「未来のために、当たり前に積み上げていくこと」だと考えています。スポーツは、観戦による感動・興奮や選手・チームへの憧れなどを通じて行動の動機を生むことができるポテンシャルがあります。試合会場ではフードドライブ、パラスポーツ体験、展示ブースなどを設け、ファンの方々が楽しみながらSDGsへのタッチポイントを設ける仕組みづくりを進めています。「いつもの観戦体験の延長線上で気づきが生まれる」、その状況を自然に作り上げることを大切にしています。
実際に活動を進める中で、心に残っている反応や出来事はありますか
徒歩や自転車で来場されたファンの方から、「環境に良いことをしている実感があって嬉しかった」という言葉をいただきました。スポーツが行動のスイッチになる瞬間を目の当たりにした気がして、とても印象に残っています。

新しい挑戦である以上、必ず成功すると決まっているわけではありません。ただ、チャレンジし続けることが静岡ブルーレヴズの特徴でもあり、地域によい変化をもたらせると信じています。同じ課題を抱える多くの地方都市、さらにはスポーツ以外のイベントにも展開できる可能性も感じています。

今後特に力を入れたい領域、そして中長期的に目指す未来について教えてください
SCRUM Actionは引き続き力を入れていきます。思いに共感し、「応援したい」と思っていただけるクラブであり続けることが大切だと考えています。また、ものづくりの街でもある静岡県は、脱炭素への意識が高い地域だと感じています。だからこそ、私たちの取り組みが日本のモデルケースになる未来を思い描いています。

そして何よりも、この地域に暮らす方々が「このチームがあって良かった」と思っていただけるクラブでありたいです。週末の楽しみ、家族の思い出、Uターン就職のきっかけ…そのすべてになれるクラブを目指しています。

昨シーズン、静岡ブルーレヴズはレギュラーシーズンで4位となり、静岡ブルーレヴズとしては初のプレーオフ進出を果たしました。今季の開幕戦はアウェーが12月14日、ホームは12月21日に予定されており、今季は“日本一”の目標を掲げています。 静岡ブルーレヴズの挑戦は、スタジアムの中はもちろん、日本全国のまちづくりの未来にも広がっています。
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