SDGs INTERVIEW

【前編】非財務な企業価値こそ大切にしたい、すべての人へ必要な金融支援を届ける|浜松いわた信用金庫のSDGs支援活動
INTERVIEW #04

【前編】非財務な企業価値こそ大切にしたい、すべての人へ必要な金融支援を届ける|浜松いわた信用金庫のSDGs支援活動

浜松いわた信用金庫 SDGs推進部
竹内嘉邦さん

浜松地域を中心に約80店舗を展開し、地域に密着した金融支援を行う浜松いわた信用金庫。より多くの企業・人へ金融支援を広げようと、2019年からSDGsに取り組んできました。

返済能力だけでなく、企業の強みや地域への貢献といった非財務的な価値にもとづく金融支援を始めています。浜松いわた信用金庫 SDGs推進部 副部長ビジネスパートナーの竹内嘉邦さん(以下、竹内さん)は、「顧客との長期的な信頼関係が何よりも大事」と話します。

同金庫が考えるSDGsの価値や取り組み方のポイントを聞きました。

地域の信用金庫がSDGsに取り組むようになったきっかけ
最初に、貴庫にSDGs推進部ができたきっかけを教えてください。
SDGsに取り組むことで世界的な問題を解決していきたい、という想いはもちろんですが、SDGsを通じて地域にとって良い取り組みをたくさんさせていただきたい、という考えが根底にあります。

そもそも信用金庫というのは、みなさまからお預かりしたお金を、地域社会の発展のために還元させていただく役目を負っているからです。地域に喜ばれることをして、その活動を通じて地域を元気にしていくのが大事だと考えています。
2019年、浜松いわた信用金庫内にSDGs推進部が新設されたのは1月21日で、旧浜松信用金庫と旧磐田信用金庫との合併の日でしたね。
合併日とSDGs推進部の設立日を一緒にしたのは、新金庫のスタートにおいてSDGsを経営の軸に据えていくという想いの表れだったと思います。

SDGsの8-10に「すべての人に金融アクセスを」というターゲット(目標)があります。すべての人に金融サービスを広げたい、金融サービスを取りこぼさない。浜松いわた信用金庫の理念にもそうした考え方はありましたし、これからもその考え方を推進していくべきだという考えが根底にありました。

また私たちは地域の信用金庫として、地域企業さまの1社1社にもっと寄り添いたい。もっと多くの方に細やかなサポートをさせていただき、地域を元気にしていきたい。そうした想いも持っています。SDGsを起点とすれば、そうしたサポートができるのではないかと考えたのです。
なるほど。似たような考え方にCSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)があり、貴庫でもかねてから社会貢献活動に取り組まれてきたと思います。そうした中にあって、SDGsに活路を見出した理由は何だったのでしょうか?
CSRとは、寄付やボランティアを通じて企業の社会的責任を果たしていく活動をいいますね。ということは、その活動は業績に左右されてしまいます。たとえば、「去年は業績がよかったので100万円寄付できたけれど、今年は業績が悪かったので寄付できません」と。これでは持続性に乏しいといえます。

またCSVは、事業を通じて社会課題を解決する手法であり、社会的価値と経済的価値の両立を叶えます。他社やお客さまと対話をしながら、その活動自体が収益を生めるように、協力体制やビジネスモデルまで考えていきますね。

そうしたCSV的な活動に持続性を持たせていくのがSDGsだと思うのです。1年単位や単発のビジネスモデルではなく、5年10年といった中長期的に継続する事業を育てるのがSDGsではないか、と。社会貢献もCSVの活動も、この地域で持続させていかなければいけません。そのために、当庫ではSDGsの考え方を取り入れたのだと理解しています。

ですから、国連が提唱する世界的なSDGs活動に対し、私たちが行うSDGs活動は「ローカルSDGs」と呼んでもいいかもしれませんね。地域の1社1社が元気になることが、世界を元気にする第一歩と考えています。私自身もこの「ローカルSDGs」こそ私たちがやっていくべき活動だと思って、全国の信用金庫に向けた講演会でもみなさんにお話しています。
浜松いわた信用金庫の考えるSDGsは、「リレーションシップバンキング」を1社1社と結ぶこと
なるほど、貴庫の立ち位置がよく分かりました。ちなみに、「すべての人に金融アクセスを」は、具体的にどのように展開していますか?
「地域のすべての方に金融サービスを届けたい」と思ったら、財務情報だけでは読み取れない企業さまの“非財務”な価値を、私たちがどれだけ見つけられるかが重要です。
“非”財務の情報を重視するのですか。
はい。私たちの主たる金融サービスに融資があります。これまでは、ご依頼先の返済能力に応じて審査させていただくのが一般的でした。当然ながら今も変わらずとても重要なことです。ただ、これからはそれだけでは地域企業さまの1社1社に必要な金融サービスが行き届きません。

どの企業さまも地域になくてはならない企業であって、だからこそ存続してきたはずです。みなさまの事業が地域に必要とされてきた理由は何なのか、という非財務な企業価値を私たち信用金庫の職員こそが知り尽くしていて、必要な支援を行うことが重要です。
非財務な企業価値を見極めるとは、企業が地域に息づいている理由を見極めていくことなのですね。
そうですね。金融業務を提供させていただく際には、当然ながら決算書の財務情報が重視されます。ですが、目には見えない価値にも同じように、その企業さまがこの地域に必要とされるポイントが眠っているという考え方なのです。

もう少し具体的にいうと、企業さまの「強み」を見ていくということです。あるいは、社員さまに対する経営者さまの想いや、経営理念などに現れていることもあります。

それをうまく言い表した言葉が「リレーションシップバンキング」という考え方です。
リレーションシップバンキングとは初めて聞きました。詳しく教えてください。
リレーションシップバンキングとは、地域のみなさまと長期にわたる信頼関係を築き、その中でやり取りされる非財務情報の中からビジネスを築いていく在り方をいいます。

非財務情報を具現化していくためには、お客さまとの対話を何度も繰り返さなければいけません。そしてその過程では、さまざまなお困りごとに応えていきますから、信頼関係が結べます。将来的には、新たなビジネスの創出や融資など、より大きなご支援につながっていくのです。だからこそ、非財務を通じて築く信頼関係は、「将来財務」と呼ばれています。

浜松いわた信用金庫にとってのSDGsとは、このリレーションシップバンキングを1社1社と築いていくことだと考えています。1社の企業さまが元気になると、雇用の創出や新産業の創出が生まれ、地域全体の産業振興につながりますからね。
お客さまとの長期的な信頼関係にもとづく支援を、8-10を目標に置き「すべての人に」届けたいと考えているのですね。
そうですね。創業を考えているタイミングなのか、成長拡大期なのか、それとも今は苦しい局面にいらっしゃるのか。みなさまがどのフェーズにいるかに関わらず、長期的なお付き合いにより、みなさまのビジネスを育ませていただく一員でありたい、と。

また、そうしたリレーションシップバンキングによりお客さまへ貢献する在り方を、当庫の職員の働きがいにつなげたいと考えています。地域のみなさまにこんなにも慕っていただきながら、地域に根ざした仕事をさせていただいているということーーこの喜びは、お客さまに心から信頼していただくことで生まれてくるものです。


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