SDGs INTERVIEW

【後編】非財務な企業価値こそ大切にしたい、すべての人へ必要な金融支援を届ける|浜松いわた信用金庫のSDGs支援活動
INTERVIEW #04

【後編】非財務な企業価値こそ大切にしたい、すべての人へ必要な金融支援を届ける|浜松いわた信用金庫のSDGs支援活動

浜松いわた信用金庫 SDGs推進部
竹内嘉邦さん

浜松地域を中心に約80店舗を展開し、地域に密着した金融支援を行う浜松いわた信用金庫。より多くの企業・人へ金融支援を広げようと、2019年からSDGsに取り組んできました。

返済能力だけでなく、企業の強みや地域への貢献といった非財務的な価値にもとづく金融支援を始めています。浜松いわた信用金庫 SDGs推進部 副部長ビジネスパートナーの竹内嘉邦さん(以下、竹内さん)は、「顧客との長期的な信頼関係が何よりも大事」と話します。

同金庫が考えるSDGsの価値や取り組み方のポイントを聞きました。



前編はこちら


“パーパス”を整理し社内に浸透させると、SDGs施策は社員から自発的に生まれる
金融機関で行うSDGs支援というと、SDGsを起点とした金融商品の開発・展開やペーパーレス化をはじめとするカーボンニュートラルの推進などのイメージがありました。貴庫では、非財務な企業価値を見出し1社1社との信頼関係にもとづく支援をしていると前回お聞きし、その印象がガラッと変わりました。
そうかもしれませんね。ただ私自身、リレーションシップバンキングに近い活動は、新人時代から支店長時代にいたるまで当たり前のようにやっていたな、と思うのです。

たとえば、お客さまが新規事業をやってみたいと聞けば、持てるネットワークの中からお繋ぎできそうな企業を探して、1日、2日と訪問をして回ったり。何か経営課題があると聞けば、だれか力になってくれそうな人をご紹介したり。そうしたご支援を続けていくことで、お客さまととてもいい信頼関係ができるんですね。また、応援してくださる地域の企業さまには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

すると、融資のご相談をはじめ、お役に立てる機会が不思議とどんどん巡ってきます。信頼関係を築くことが、遠回りなようで近道なのかもしれません。そうした経歴があったので、今、SDGs推進のお役目をいただいているのかな、というのが自分の中での理解です。

小学生向けの授業でも扱うという「SDGsすごろく」、SDGsの普及活動にも取り組む。
なるほど、竹内さんがSDGsに取り組む理由がよくわかりました。地域の企業に向け、具体的にはどのようなSDGs支援を行っていますか?
企業さまから個別の講演依頼をいただいたときから、本格的なご支援がスタートすることが多いです。具体的な支援としては、次の2ステップがあります。

1ステップ目は、企業さま固有の「パーパス」を整理することです。パーパスとは、日本語で「目的」のこと。つまり、その企業さまの存在価値という意味です。具体的には、地域・お取引先・社員さまにどんな貢献をされているかを経営者の方にヒアリングし、また社員のみなさまにも考えていただくワークショップや研修を行います。

ステップ1で自社のパーパスを洗い出したら、「SDGs宣言」にまとめあげるのが2ステップ目です。SDGs宣言には、事業理念と企業理念、企業の技術、SDGsメッセージを4枚にまとめます。そして企業さまのホームページにSDGs宣言を掲載いただくなどして、社員さまに周知を行っていただきます。
企業における非財務の価値は、すなわち企業が存在する「パーパス(目的)」だと考え、それを全社的に掘り下げていくのですね。その後、具体的にSDGsの取り組みを検討する時間は取っていませんか?
そうですね、特別に設けていません。というのも、SDGsの取り組みに関するアイデアは、こうしたステップを経る過程で社員さまから自然と生まれるようになるからです。

ご自身の仕事が社会の役に立っていることを社員さまが実感し、働きがいが増します。すると、現場でこんなことができそうだとか、こういうことに取り組んでみたいとか、SDGsへ自発的に取り組めるようになっていくのです。
企業の存在理由や存在価値が社内に浸透していくことで、さまざまな施策が打ちやすくなっていくとは驚きました。実際に効果が出た企業例はありますか?
採用や離職率に現れる企業さまが多い印象があります。たとえば、1962年創業で共配システム・企業宅配事業を手がける株式会社トレードトラストさまは、SDGs宣言を作成してから離職率が圧倒的に下がったといいます。

「トレードトラストの仕事は『ただ荷物を運ぶこと』ではありません」ホームページ上のメッセージには同社のパーパスが現れている
このとき軸にしたのも、やはり企業さまのパーパスです。トレードトラストさまの手がける物流が、いかに地域を支えているかを見える化しました。

結果、トレードトラストさまの仕事にやりがいを感じる社員さまが増え、さまざまな施策が打ち出されました。SDGs17のゴールを車体にプリントした「SDGsトラック」や女性ドライバーの活躍推進、エコドライブの推奨など、ユニークな取り組みをされています。

そうした取り組みをホームページに公開したことも奏功し、採用力も向上しました。SDGsに取り組む姿勢はよい企業イメージにも繋がるためです。反響が増え、ドライバーを1名募集したときに多数の応募が来たそうです。
人手不足が叫ばれる業界で、素晴らしい成果ですね。
浜松いわた信用金庫のSDGs支援により、企業価値をより高めている企業例がたくさん生まれています。詳細は、こちらの「SDGs登録制度」ページからご確認ください。
できるだけ分かりやすく、何度でも現場と対話する
企業のパーパスを全社員が見つめなおし、再認識していく機会はとても豊かだと思いました。ただ、本業で忙しい中で企業の社員さまは、すんなり意見を出してくれるものでしょうか?
それは実際に現場に出てみるとよく分かります。みなさん忙しい合間を縫って研修に参加してくれますから、作業服のまま参加する方もいらっしゃれば、エプロンを付けたまま来てくださる方もいらっしゃいます。

「何でやるんですか?」「それより今日の売り上げが大事でしょう」といったご質問は、もう当たり前のようにいただきます。そうした中で、「あなたのお仕事はこれだけ地域の役に立っていますよ」「非財務で中期的なことにも取り組んでいかないと、事業が持続しませんよ」といったことを膝を突き合わせてお話させていただきます。

そのように現場に踏み込んで対話させていただけるガッツがあるのが、信用金庫の強みだと思います。1人ひとりにパーパスが腹落ちしなければSDGsも進みませんし、リレーションシップバンキングの第一歩も現場からです。

そうしたやり取りも含めてパーパスをみなさんと一緒に考えていく機会をいただけるのは、とてもありがたいことです。
SDGs推進部ができてから3年が経ちました。SDGs支援に取り組む中で、貴庫にとっての価値も見えてきたでしょうか?
はい、3つの観点から価値が生まれています。1つは、お客さまの課題解決に向けた最初の接点をSDGsを通じて創るということです。たとえば、SDGsについて学びたい企業さまにSDGsの研修や講演会へ伺うことが、お客さまとの最初の接点となっています。

あとの2つの方がもしかしたらより大事かもしれません。その2つ目とは、弊庫の職員の働きがい向上です。SDGs支援に取り組む中で、弊庫の職員にもパーパスを持ってもらえるようにしたいと考えています。まさにウェルビーイングの醸成ですね。

たとえば、私がお客さまのところへ伺う際には、エリアの営業職員にも同行してもらっています。SDGsを起点としてお客さまとの共感が生まれ、その後も継続的な支援を行うことで信頼関係が育まれます。そこから実際の融資や資産形成につながることもありますから、職員にとって大きな成功体験となります。

これだけ地域のみなさんに慕っていただきながら、地域に根ざして仕事をさせていただいているということ。この喜びを、成功体験を通じて実感してもらえたらと考えています。

そして3つ目が、私が伺った後に営業店が訪問しやすい関係性を作ることです。私がお客さまのもとでSDGsに関するお話をしてくることで、その翌日から営業店がお客さまと身近になり、訪問しやすくなってくれたらと思っています。

SDGs推進部は、この3つを柱として地域のSDGs支援を行っています。お取引の有無や企業さまの規模・業種も問わずに伺い、できるだけ分かりやすくSDGsについてお話しさせていただいています。
どの企業もSDGsを通じて企業価値を見つめられるよう、親身にお応えされている姿勢がとても勉強になりました。
それでは最後に、地域の企業さまがSDGsに関する相談をしたいと思ったときは、どのように相談すればいいか教えてください。
ありがとうございます。1つ目は、講演会に参加いただき、私たちが考えるSDGsの考え方を知っていただく方法があります。

これまでの2年間で約200回以上登壇させていただき、一部の講演はYouTubeでもご覧いただけます。

「SDGsとは?~パートナーシップ(協働)こそSDGs!~」/講師:竹内嘉邦 氏【パートナーシップ・ミーティング2021】
2つ目には、営業店に出向いていただく方法です。担当職員に「SDGsに興味がある」と、気軽にお声がけいただけましたら幸いです。
BACK
pagetop